■休日のモバイラー
理恵が(妻である)、「今日、ねーちゃんと買い物にいってくるからね。あ、丈(たける:長男である)もつれてくから。」と、少し遅めの朝食を取っている時に、唐突に言った。
「あ、そう。で、どこに買い物にいくの?」と、とりあえずの成り行き上、訪ねると、近くのD.I.Yショップとのこと。
「ふーん」と生返事を返しつつ、私の頭の中では、「らっきー!今日は1日、いや半日は自由時間だなっ!」と小さいお子さんをお持ちなら、どこのオトーさんも思うようなことを、妻には悟られないように目の奥をビカリと光らせて思った。
その後、息子とNHKの「うたってオドロンパ」を一緒に見て、妻に比べたら圧倒的に少ない「父親と子供の時間」を静かに過ごし、妻と息子を家から車で3分という妻の実家まで、送っていった。
外は、天気予報通り雪が降っていた。
その日の朝の天気番組で、県内の空模様をお天気カメラをもったリポーターが中継していたが、番組のお天気おねーさん(なんとなく、気分屋の女性といった響きだなぁ)が「今日は、県内各地で大雪になるおそれがあります」ときっぱり言っていたのに対して、各地の映像はそれほど降っていない状態だった。
「おかしいですねぇー」とお天気おねーさんは、悔しがっていたが、まあ、雪なんてそんなに降らなくてもいいのさ、あんたが悔しがることはないよと、心のなかでつぶやきつつ、寝ぼけた頭でテレビを見ていたが、番組が終わったのを見計らったかのようにチラチラと雪が降ってきた。
「まあ、しかし、そんなに積もらないだろう」と思っていたのだが、雪はチラチラからドカドカに変わり、あっというまにあたりは銀世界に変わってしまった。

実は、自由に遊べる時間が出来たら、この間買った「携帯TV用ブースター付きアンテナSK−16A」が、外でも充分に使えるかどうか実験してみようという、しょーもない計画を密かにたてていたのだった。
・・・・しかし、外は雪である。
なんとなく億劫ながらも、自分に気合いを入れつつ、必要な機材をパソコンバックに入れていった。
そこでふと、「あ、これは、ホームページのネタに使えるんじゃないか!」とひらめき、そういうことなら、GPSもやってしまえ!と急にやる気がでてきて、結局、写真のような装備になった。

持っていく物として、チャンドラ&ACアダプター、GPSアンテナ&カード、TVチューナー&カード、携帯TVアンテナ、DC−ACコンバーター、デジタルカメラ、財布とアーミーナイフをパソコンバックに入れ、ブルゾンのぽけっとには椎名誠の「あやしい探検隊海で笑う」を無造作に突っ込んで、寒いとつらいからと魔法瓶に熱いブラックコーヒーを入れていざ、玄関を出たのだった。

まだ、降り始めてから1時間とちょっとしかたってないにも関わらず、ジムニーはすでに雪に覆われていて、軽くフロントガラスの雪をホウキで払って、車内にチャンドラーをセッティングした。

目的地は、夏になると良くバス釣りに行く場所で、まあ、私が家に居なければそこに居るというくらい、目をつぶっても行ける場所なのだが、今回はGPSを使ってそこまで行くということなので、まず、チャンドラでMAPFAN2を起動した。
そして、自宅からそのバス釣りの野池までを直線距離で指定した。
それからルート検索を実行すると、自宅から目的地までの最短ルートが計算されて画面に表示されるので、あとは、GPS機能をONにして、現在地と野池までのルートを確認しながら車を走らせれば良いのだ。

今日は、衛星の電波の状態が良いのか、画面の道路上を現在地を示すマーカーがピッタリと合っていて気持ちがいい。
チャンドラーの液晶も明るいので、周りの雪で乱反射した光が車内に入ってきている割には、視認性が良く、精神衛生上も良い。
それにしても、交通量が少なくない旧国道でさえ、雪で道路が白くなっているので、たしかに今日は大雪になりそうな気配である。

と、そのとき、2台の車が路肩に止まっているのが見えた。
軽のワンボックスと、乗用車であった。
どうも乗用車側が、カーブで車がスリップして回転してしまい、路肩に突っ込んで、そこから出られなくなっているようである。
幸い、私のジムニーには、牽引ロープ&バッテリーケーブルがセットになった「セーフティセット¥1280」が積んであったので、車を止めて助けることにした。
現場には、おばさん1人と、おじさんが1人、若い男が1人いた。
雰囲気的に、路肩に突っ込んでしまったのは、おばさんで、たまたまそこを通りかかったおじさんと若い男が、それに気がついて助けているという感じだった。
しかし、車は、男2人がかりで押しても、びくともしないようで、ホトホト困っているようであった。
私が、ジムニーの窓を開け、「手伝いますかぁ?」と聞くと、おじさんが、息を切らせながら「いやあ、お願いします」といった。
私は、手慣れた手つきで、ジムニーから牽引ロープを取り出し、乗用車側のフックに取り付け、U字シャックルで固定し、その一方をジムニーのリアフックに固定した。
おじさんが、「ああ、そういう便利なの持ってたんだぁ。これ、4WDなの?」と聞くので、「ええそうですよ。」というと、「ああ、それなら、一発で大丈夫だぁ」と間延びした声で言った。
私は、ジムニーに乗り込み、トランスファーギアを4WDから、スーパー4WD(通常の4WDよりもさらにギヤ比が低く、大きいトルクが出るモード)に変えて、ゆっくりと乗用車を牽引し始めた。
すると、乗用車は、ナナメになりながらズルズルと引きずられて、まるで、紐で引かれる鈍重な牛のように、のろのろと路肩から道路に移動することが出来た。
おじさんが、「ああ、もう、大丈夫だあ。いいよ」と言ったので、ジムニーを止めて、車外に出ると、おじさんと若い男が牽引ロープを自発的に外してくれていた。
「あんたのこの車、軽なのかい?」とおじさんは高揚した声で言った。
「はい、そうですよ」と今どき、ジムニーくらい誰でも知ってんだろー、と思いつつ、私は答えた。
「こういう車だったら、雪道でも問題ないなぁ」とおじさんが関心して言ったので、「いやあ、でも、ノーマルタイヤなんで、やっぱり滑りますよ」と私は謙遜して言った。
そばで、おばさんが「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度も頭を下げていた。
実はこの模様をデジカメで撮りたかったのだが、何となくおばさんを助けようと一生懸命になっているおじさんにすまない気がして、取れなかった。
再び、ジムニーを走らせる。
そして5分もかからずに目的の野池に到着することが出来た。

半年ぶりに見る野池は、池の表面のほとんどが氷で覆われていたが、水位は充分にあり、今年の初夏には楽しめることだろう。
それにしても、水面が凍り付くような環境の中で、ひっそりと、そして力強く生きているブラックバスがいるのかと思うと、アメリカの温かいフロリダから、こんな辺境のしかも東北に連れてこられて、お前らも大変だよなぁと、なんとなく感動及び、同情したのだが、「でもやっぱり夏になったら、釣りにくるぞ!」と、釣り人独自の理論展開をして、とりあえず、TVを見るためのチャンドラーのセッティングを行った。
まず、TVカードにチューナーをセットして、それをチャンドラーに入れ込む。

ピポッという認識音を確認してから、TVのプログラムを実行する。
すると、外部アンテナを接続しない状態で音声だけが聞こえてきた。
それからおもむろに、外部アンテナをバックから取り出し、ブースターの電源を入れて、ロッドアンテナをいっぱいに伸ばした状態で、チューナーのアンテナ端子に接続した。
その途端、嘘のように鮮明な画像がチャンドラの画面に現れた。
やっぱり、このSK−16Aは素晴らしいアンテナである。
画面の画像が鮮明なので、フルサイズ表示を行った。
このモードにすると、チャンドラの画面いっぱいにTV画像が表示されるので、その辺のポケットTVでは出来ない、「どこでも大画面液晶TV」が完成するのである。

この画面での表示には、かなりCPUのパワーとグラフィックチップのパワーが喰われてしまうのだが、クロックアップしたチャンドラでは、なんの違和感もなく画像を表示出来てしまった。
「うーん、いいぞ、いいぞ!」と一人興奮し、ほくそえみながら、GPSにも、TVにもなるノートパソコンの可能性を再認識するとともに、これからは、ドライブするときには、このTVとGPSセットは必需だな!と一人で勝手に決めたのだった。

さて、目的の実験が済んだので、あとはのんびりと椎名誠の文庫本を読み、熱いコーヒーをすすりながら、久しぶりの自分の時間を満喫した私だったが、「あ、いかん!今のうちにまとめておかないと、あとで、思い出しながらホームページの文章を書かなければならなくなる!」とセリフめいた独り言を言いつつ、チャンドラのテキストデータベース「知子の情報95」を起動してこの文章を書くのであった。
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